高等学校教育振興支援



高校大学連携特別講義

開催日時:平成二十九年一月二十八日(土) 

開催場所:京都大学 総合人間学部講義室

受講者:二校から十六名 引率教員二名

講義1

「水はいのちの源

   ―近畿の水甕、琵琶湖の水の将来―」

 講師 京都大学大学院人間環境学研究科

                杉山雅人 教授

講義2

「自分の食べ方は大丈夫?

    世界に学ぶ、元気で美しくなる”食べ方上手」

 講師 家森 幸男 京都大学名誉教授            

          武庫川女子大学 国際健康開発研究所所長


 近畿圏の重要な水資源である琵琶湖を例に取りながら、陸水域の水環境とその季節変化、地球温暖化の影響について講義しました。まずは、われわれ生命を生んだ源である水は地球上にどれぐらいあるのか、どのように分布しているのか。生命は海で生まれたと考えられるのに、われわれ地上動物はなぜ海水によってはもはや生きられず、淡水を必要とするのか。これらのことについて説明しました。日本に住んでいる人には、すぐには思いつきませんが、地球上で二番めに多く存在している水は、南極や氷河地帯にある固体の氷としての水です(一番はもちろん海水です)。一方、私たちが毎日利用している、地球表面に存在する淡水(湖や川にある淡水)は、地球全体の水のわずか〇・〇〇九%でしかありません。地上動物が淡水でないと生きられないのは、動物が水中から地上に進出したとき、海から直接にではなく、淡水域を経由したためと考えられます。その証拠に、両生類は海にはいなくて淡水域のみに棲息しています。われわれにとっての淡水の重要性が分かります。

講義では次に、琵琶湖での水の動き(湖水の成層と鉛直混合)、化学環境の変化を説明しました。水温による湖水の成層と鉛直混合によって、湖の化学環境が、特に溶存酸素の濃度と分布が影響されることを述べました。成層が続くと、溶存酸素は湖底には供給されず、減少の一途をたどります。冬の湖面冷却によって、湖水の鉛直混合が起こって始めて、溶存酸素は湖底に供給されるようになります。この意味で冬の冷却が湖にとっては大切なのです。講義ではこうした湖水の動きについて、高校生自らの手で実験してもらいました。

この湖面冷却が地球温暖化によって脆弱となりつつあるのです。講義はその説明に移りました。琵琶湖の水温も周辺気温も今ともに上昇しつつあります。気象庁は、二一世紀末には二〇世紀末に比べて、日本の気温は全国的に二・五~三・五℃上昇すると予測しています。京都や滋賀は現在の鹿児島のような気温になると考えられます。そうすると琵琶湖の湖水の鉛直混合は滞るようになるでしょう。実際、鹿児島県にある池田湖では、湖水が完全に鉛直混合するのは現在でも数年に一度のみです。このため、通常は湖底には溶存酸素がなく、湖水は還元的になっていて鉄やマンガンなどの重金属イオンの濃度も高い値にあります。このようなことが今後、琵琶湖でも起こるかもしれません。そうならないように今後の取り組みが求められます。

将来の琵琶湖の環境への危惧を伝えるとともに、次代を担う鴨沂高等学校生の地球環境保全に対する積極的な貢献を期待して講義を終えました。

 

1.世界調査で分った栄養と健康の関係

WHO(世界保健機関)によれば、世界中の六割以上は生活習慣の良くない為に亡くなっている。「人は血管と共に老いる。」というが、血管の老化は若い時からの食生活が影響し、二大血管病、即ち、脳卒中と心筋梗塞を起こす。私共は、まる一日、二十四時間の尿を世界の六〇を超える地域の人々から集め、先ず寝たきりや認知症の原因となる脳卒中は、食塩の摂り過ぎによる高血圧の結果、脳の血管が破れて出血し、血管が詰まって梗塞になったりする為、塩分の摂取を一日七g以下にする事が予防には重要で、実際食塩を使っていなかったマサイ族には高血圧の人は無かった。

 

2.海の幸、山の恵みが健康の素

食はいのちという通り、何を食べると健康になれるかを世界の尿を分析して分った。魚の摂取のマーカーとなるアミノ酸の一種、タウリンと、マグネシウムの摂取が多い程、肥満、高血圧、それに血液のコレステロールの高い高脂血症が少ない事が分った。海の幸、魚介類からのタウリンと海水に多いマグネシウムを含む海藻や、山の恵みの種実に豊富なマグネシウムが、現在世界で増えている生活習慣病のリスクを抑え、肥満、高血圧、高脂血症が原因の心筋梗塞は予防も可能である事が分った。

 

3.日本食のメリット、魚食と大豆食

和食を採る日本人は、魚介類のタウリンの尿排泄が多く、また、種実食としてマグネシウムも多く含む大豆摂取が多い事を、大豆に特に多く含まれるイソフラボンの尿中排泄の多い事で証明した。魚食のマーカー、タウリンと血中のDHAなど魚由来のn−3系多価不飽和脂肪酸が多いと心筋梗塞の死亡率(心臓死)が低い事も証明し、更に大豆のイソフラボンの尿中排泄量が多い程、心臓死も少ない事を明らかにした。

即ち、和食に多い魚と大豆のお蔭で日本人の心臓死は先進国の中で世界一少なく、心臓死が少ないと平均寿命は長くなる為、日本人の世界一の平均寿命は魚と大豆食に支えられている事が分った。大豆イソフラボンには、欧米で多い乳癌、前立腺癌を抑え、骨粗鬆症を抑える効果のある事が世界調査の結果から期待出来る。

 

4.バランス食〝まごはやさしいヨ〟!

この日本の伝統食、魚、大豆の摂取が若い人々では減っている。これでは、将来、心臓死、乳癌、前立腺癌、骨粗鬆症など生活習慣病は増え、日本人の長寿も危うい。さらに、塩分の過剰な害を抑え、大豆イソフラボンの効果を高める抗酸化力もある野菜は、厚生省の目標は一日三五〇gだが、一五〇g程度しか摂れていないのが若者の現状である。そこで大学生に野菜を一日三五〇g、蒸し料理で二週間摂って貰ったところ、酸化されて動脈硬化の原因となる悪玉(LDL)コレステロールが普通料理よりも低下した。若い人でも充分な野菜の摂取量が血管を若々しく保つのに有効だと分った。

従って、豆(マ)ゴマ(ゴ)わかめ(ワ)で海藻、野菜(ヤ)魚(サ)しいたけ(シ)できのこ類、芋(イ)などの和食の長寿の食材と、食塩の害を打消し、骨を丈夫にするカルシウム、マグネシウムも多く、インフルエンザに対する免疫力も腸内細菌の改善で強めるヨーグルト(ヨ)、西の長寿食を東の長寿食、和食と合わせて摂る事が薦められる。

 

5.〝適塩和食〟の食習慣で元気に美しく

世界研究の結果、〝適塩和食〟は血管の健康に良く、元気に美しく生きられる明日の健康を約束する食習慣である事が分った。成長期の高校生、大学生の食の現状が大きく乱れている現在、その異常に気付き、改善を推し進める為、二十四時間尿の簡易摂取による栄養のセルフチェックを推奨している。この新しい栄養チェックで食習慣を改める研究や実践を推奨する為に、私共は、NPO(世界健康フロンティア研究会)がユネスコの後援を得て毎年開催している世界健康フォーラムで〝モナリザ賞〟(食生活保全賞)を制定した。

平成二十九年度のフォーラムは十一月二十二日(水)ロームシアター京都で「健康は先取りする時代」をテーマに開催し、松浦前ユネスコ事務局長からモナリザ賞が授与されます。若い高校生のみなさんが食生活の改善に努め、その成果で、このモナリザ賞に挑戦していただく事を心から期待します。